消化器内科は消化器・肝臓センターの一部としての役割を持ち、外科・放射線科・臨床検査科と随時カンファレンスを行うことで、質の高い診断・治療を目指しています。
診療実績 2023年度
■患者数
入院患者数 1,544名(新入院患者)
外来患者数(内紹介患者) 22,295名( 1,292名)
■検査件数
消化器内視鏡検査数(上部) 3,179件
消化器内視鏡検査数(下部) 1,654件
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 186件
超音波内視鏡(EUS) 137件
胃・大腸粘膜切開剥離術(ESD) 30件
胃・大腸粘膜切除術(EMR) 615件
食道静脈瘤硬化療法(EIS)、結紮療法(EVL) 30件
胃瘻(PEG(ペグ))造設 11件
腹部超音波検査・腹部造影超音波検査 13,000件
超音波ガイド下処置(肝生検・RFA) 55件
膵精密エコー 40件
肝動脈化学塞栓療法(TACE) 32件
経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)、胆嚢ドレナージPTGBD 2件
MRエラストグラフィ 23件
CART(腹水濾過濃縮再静注法) 52件
市立貝塚病院・消化器内科は昨年まで5名だったスタッフが2023年4月に2名増員され、7名のスタッフで診療を行っております。
消化器病専門医は5名、消化器内視鏡専門医は5名、肝臓専門医は3名、総合内科専門医は5名と、各々の学会の指導医が常勤しており、幅広い消化器疾患に対処可能です。紹介患者さまに関しては、可能な限りの幅広い専門的医療を提供したいと考えております。今後ともご支援よろしくお願い致します。
当科の特徴一覧
1)脂肪肝の分類
以前はアルコールを大量に摂取する方が肝臓の病気にかかり、そうでない方は肝臓を悪くしないと思われていました。ところが近年アルコールを全く摂取しない方が肝硬変や肝臓がんなどになることが増えています。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD;ナッフルディ)です。
NAFLDの患者さんは非アルコール性脂肪肝(NAFL;ナッフル)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH;ナッシュ)に分類されますが、特にNASH(ナッシュ)の患者さんはご本人の知らないうちに肝臓が慢性肝炎から肝硬変と悪化し、肝臓がんを発症していることがあり注意が必要です。2023年6月にそれらの呼び方が世界的に変化し、最近では糖尿病や高脂血症、高血圧の患者さんや軽度肥満の方で脂肪肝をお持ちの方に多く見られる代謝異常に関連した脂肪性肝疾患を総称してMASLD(マッフルディ)と呼ぶようになり、脂肪肝にさらに注目が集まっています。アルコールを摂取するかたも同様に脂肪肝になり、アルコール摂取量で分類します。
2)正確な診断
脂肪性肝疾患の患者さんを救うためには、正確な診断が不可欠です。
まずは採血です。当院では一般的な採血でも肝臓の硬さが推測できるFIB-4インデックスという指標を電子カルテ上で自動計算しており、当科患者さんはもちろん、当院内科の糖尿病専門医と連携し、内科の患者さんで必要な方に紹介受診頂いています。
さらに専門的な採血でその他の肝疾患の診断を並行して行い、腹部エコーで肝臓の脂肪量や硬さ(肝硬度)を測定します。当院の超音波装置は最新機器であり、肝硬度はSWE(シュアウェイブ・エラストグラフィ)、肝脂肪量はATI(アテニュエィション・イメージング)で外来検査にて測定しております。もちろん苦痛を伴わない非侵襲的検査です。
その後CTやMRIでその他の肝臓疾患を除外しながら正確な診断に迫ります。
当院のMRIは3テスラという非常に高性能なMRIであり、肝硬度を画像で測定するMRエラストグラフィも施行可能な病院は全国的にも限られ、80施設(2023年12月時点)しかありません。
さらに顕微鏡的に詳しく肝臓を診断するために、腹部エコー下で肝臓組織を採取する肝生検という検査を行うこともあります。現在のガイドラインでも脂肪肝診断の中心として「肝生検での正確な病理診断」が推奨されています。 当院は大阪府下でも有数の、肝生検施行数の豊富な病院であり、安心して検査および診断を受けていただくことが可能です。
3)脂肪肝の治療
まず食事と適度な運動です。体重については適正体重まで体重を減少することはなかなか難しいので、「現在の体重の5~7%減少」を目標とします。当科では「現在の体重の一番近い5と0を下回るようにがんばってください」と指導しています。
例えば73㎏の人なら70㎏を下回るよう、68㎏の人なら65㎏を下回るよう目標設定していただくとよいと思います。
内服薬にはビタミンE製剤や各生活習慣病治療薬を用います。現在世界ではたくさんのMASLD治療薬の開発競争が進んでいます。その最新の情報をもとに適切な治療を提供することが可能です。
4)特にご来院いただきたい患者さん
・肥満傾向および高度肥満の患者さん
・糖尿病、高脂血症、高血圧など生活習慣病をお持ちの患者さん
・かかりつけ医院や健診で、肝機能異常や脂肪肝を指摘された患者さん
・アルコールを多く飲まれる患者さん
・下記脂肪肝入院をご希望される患者さん
・血液検査でALTが30以上の患者さん
【奈良宣言特設サイト】
5)脂肪肝の改善や体重減少を目標とした入院プログラムについて
2023年10月より全国でも珍しい、脂肪肝の改善や体重減少を目標とした入院プログラムを行っています。脂肪肝の診療では体重の減少が一つの治療になりますがなかなか達成できない方が多くおられます。当院ではリハビリテーション科と栄養科の協力のもと、可能な限りの減量を目標としています。モチベーション維持のためにはまず何らかの結果を出すことが大切。一緒に目標に向けてがんばってみませんか。(当プログラムは減量を100%保証するものではありませんが、現在のところ大多数の患者さんが目標体重減少に至っています)
(文責 垣田成庸/消化器内科主任部長・消化器肝臓センター長)
1)肝臓がん(肝細胞がん)とは
肝臓がんとは肝臓にできるがんの総称です。その中には肝細胞ががん化したものや肝臓内の胆管ががん化したもの、それらが混ざったものなどに分かれます。9割以上は肝細胞ががん化した肝細胞がんですので、このサイトでは肝細胞がんを肝臓がんと表記し、解説します。
2)肝細胞がんの原因
肝臓がんの主な原因をB型・C型肝炎ウイルスが9割ほどを占めている時代もありました。しかし最近ではそれらの病気に対する薬物治療の発展に伴い、非ウイルス性の肝臓がんの割合が増加しております。非ウイルス性の中にはアルコール性肝障害や脂肪性肝疾患などが含まれます。
3)肝細胞がんの症状
肝細胞がんを発症する方には肝硬変などの慢性的な肝疾患を持っている割合が高い傾向があります。そのため、肝硬変の症状である黄疸(おうだん:皮膚や目の白い部分が黄色くなる変化)やむくみ、だるさ、かゆみなど症状が現れることがあります。一方、肝臓は沈黙の臓器ともいわれることがあるようにがんが進行してもなかなか症状として現れないケースも見受けられます。
4)肝細胞がんの検査
血液検査や各種画像検査で診断します。
血液検査では肝臓がんの腫瘍マーカーであるAFPやPIVKA-Ⅱ、AFP-L3分画などを測定します。しかし腫瘍マーカーの数値のみではがんと確実に診断することは出来ません。なぜならがん以外の病気でも腫瘍マーカーは上昇することがあるからです。一方肝臓がんが存在しても数値があまり上昇しないケースもあります。したがって実際には画像検査も並行して行います。
画像検査としては腹部超音波や腹部造影CT・MRIなどがあります。体に与える影響が少なく簡便な腹部超音波検査がスクリーニングとして行われることが多いです。しかしがんを強く疑うような場合の精密検査としては腹部造影CTやMRIなどが用いられる場合もあります。
肝臓がんのリスクである肝硬変がある場合は食道や胃の静脈瘤(血管のコブ)などを併発していることがあります。静脈瘤が破裂すると吐血(とけつ)といって大量の血液を吐き、ショック状態になる患者さんもおられます。そのため肝臓がんを直接診断するわけではありませんが、胃カメラなど肝臓以外の検査を行い、事前に静脈瘤の有無を調べる場合もあります。
5)肝細胞がんの治療
肝臓がんの治療には手術(外科治療)や局所療法(ラジオ波焼灼療法)、塞栓治療(肝動脈化学塞栓療法(TACE)など)、薬物療法、緩和ケアなどがあります。
治療法の選択は腫瘍の大きさや数、全身状態などを総合的に判断して決定します。消化器内科だけではなく、外科や放射線科と協議しながら治療を進めます。
5)-1 ラジオ波焼灼療法(RFA)/エタノール注入療法(PEIT)
ラジオ波焼灼療法は腹部の皮膚の上から特殊な針をがんに直接刺して行う治療です。針の先からラジオ波(高周波)を流し、熱によってがん組織を凝固壊死させます。がん細胞を局所的に集中して治療するため、正常な細胞への影響が少なく身体に負担の少ない治療方法です。がんの数に合わせて繰り返し行います。ただし、エコーで腫瘍の位置を確認しながら行うため、エコーで腫瘍が確認できない場合、また周りに太い血管や胆管があるなど、針を刺す際に危険性がある場合は適応外となります。その場合はエタノール注入療法(PEIT)を施行することがあります。
5)-2 肝動脈化学塞栓療法(TACE)/動注療法(TAI)
X線などの画像を見ながら鼠径部(足の付け根)などの血管からカテーテル(細い管)を入れ、病変近くまでカテーテルを進めて治療を行います。カテーテルの先端から抗がん剤や肝臓がんを栄養する血管を詰まらせる物質を注入します。手術や上記のラジオ波焼灼療法などが難しい場合や、腫瘍の数が多い場合などに選択されるケースが多いです。また、塞栓物質をつかわず抗がん剤だけを肝動脈に注入することもあります。(TAI)
5)-3 薬物療法
薬物療法では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などを用います。分子標的薬はがんの増殖や血管新生などを抑える薬物です。一方、免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が我々の身体がもつ免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを邪魔することで免疫力を維持するための薬物です。
薬物療法は手術やラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法などが適応とならない場合に選択されるケースが多いです。治療効果が乏しい場合は適宜薬剤の変更を行います。
5)-4 緩和ケア
緩和ケアとはがんなどの病気による身体的、精神的な苦痛を和らげる治療です。
今日ではがんと診断されたら緩和ケアを開始することが推奨されているため、がんの終末期だけではなく、がんの治療中も並行して行われます。病状に応じて適宜緩和ケア内科とも協議しながら症状緩和を図ります。
(文責 安井利光/消化器内科医長)
B型・C型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)による感染症です。それぞれについて詳しく説明いたします。
1)B型肝炎の経過
B型肝炎は、肝臓にHBVが感染することで炎症(肝炎)が起きている状態を言います。
そして肝炎が長期間にわたり続くようになると肝硬変、さらに肝がんを発症することもあります。
HBVの主な感染経路は2つあります。
一つ目は垂直感染といい母親がHBVに感染していると、出産のときに産道で血液を介して子供が感染してしまう経路です。成人になると免疫機構が働き、HBVを排除しようとして急性肝炎が起こります。症状は倦怠感、食欲不振、吐き気や黄疸などです。そのうち約10%が慢性肝炎に移行し、そのほかの方は肝炎が落ち着いた状態(非活動性キャリア)やほぼ正常に近い状態(臨床的寛解)に向かいます。
HBV感染者のうち約1~2%の方が肝硬変、肝がんを発症します。
二つ目の感染経路である、成人になってからHBVに初めて感染する場合は20~30%の人が急性肝炎を発症します。1%程度劇症肝炎という重症な状態になることがありますが、それ以外のほとんどの方が治癒に近い見た目では病気なのかわからない状態になります。また肝炎を発症しない70~80%の方は自然治癒します。 急性肝炎の症状はHBV感染後、数ヵ月の潜伏期間を経て、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸などの症状があらわれます。
急性肝炎の場合でも、不顕性感染の場合でも、症状が治まった後はウイルスが体から排除されており、HBVに対する免疫を獲得するため、再びHBVに感染することはありませんが、通常は体に影響が出ない程度のごく微量のHBVのもととなるものが肝臓に残ります。
このため、将来何らかのがんにかかって抗がん剤などを使用するような場合に、HBVが再び増殖してくる可能性があり注意が必要です(HBVの再活性化)。
一方で感染したHBVが体から排除されず、6ヵ月以上にわたって持続的に肝臓の中にすみつくことで、一部の方は慢性肝炎を発症します。慢性肝炎とは、通常6ヵ月以上肝炎が続いている状態(血液検査でAST,ALTが上昇)をいいます。慢性肝炎の多くは、出産時や幼児期に感染した無症候性キャリアからの発症です。
2)B型肝炎の診断と治療
診断は採血、腹部エコー、CTに加えて現在の肝臓の炎症や線維化の状態を診断するために肝生検を行うこともあります。
B型急性肝炎の場合は、一般に肝庇護療法によりほとんどの方は治癒しますが、劇症肝炎になり死亡することもありますので注意が必要です。
B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能で、治療の目的はHBVの増殖を抑え、肝硬変への進展や肝がんの発症を防ぐことになります。
治療法は抗ウイルス療法(インターフェロンや核酸アナログ製剤)です。治療開始後も腹部エコーや採血を軸に、腹部CTや内視鏡検査などによる定期的な検査が必要となります。
C型肝炎は、HCVに感染している方の血液や体液を介して発症する肝疾患です。
感染経路はB型ウイルス肝炎と同じく垂直感染(母子感染)と水平感染です。
C型ウイルス肝炎では垂直肝炎は少なくHCV感染の母親から生まれる子供の感染率は約10~15%で、感染しても3歳までに約30%が自然治癒します。
HCVに現在かかっている方のほとんどが過去の輸血や注射による感染です(水平感染)。その他、ピアスの穴あけや麻薬・覚せい剤の注射、入れ墨、医療現場での針刺し事故などによる感染がみられます。
HCVはHBVより感染力は弱く、性交渉や体液で感染することはほとんどありません。HCVに感染した後の経過には、急性肝炎を発症する場合(顕性感染)と、自覚症状がない場合(不顕性感染)があります。
症状はB型急性肝炎と同じで感染後、数ヵ月の潜伏期間を経て、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸などの症状があらわれます。
顕性感染でも不顕性感染でも、ウイルスが自然に排除されると免疫を獲得して再びHCVに感染することはありません(一過性感染と言います)。
急性肝炎の約30%は一過性感染で、残りの約70%は感染したウイルスが体から排除されず、肝臓の中にすみつきます。これを持続感染(HCVキャリア)と言います。
一部の人はB型肝炎と同様に6か月以上肝炎が続き慢性肝炎(血液検査でAST,ALTの上昇)となります。C型肝炎はゆっくりではありますが、肝臓の線維化とともに慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進展していきます。
4)C型肝炎の診断と治療
診断はB型肝炎と同様、採血、腹部エコー、CTに加えて現在の肝臓の炎症や線維化の状態を診断するために肝生検を行うこともあります。
C型急性肝炎ではB型急性肝炎と同じく安静と肝庇護療法ですが、慢性化することが多いです。劇症肝炎を発症することは稀です。
慢性C型肝炎ではインターフェロンやインターフェロンを用いないインターフェロンフリー治療(直接作用型抗ウイルス薬:DAAを使用)、肝庇護療法などが行われます。慢性C型肝炎の方はもちろん、症状がないHCVキャリアの方も肝臓に異常が隠れていることも少なくありませんので定期的に検査を受けることをおすすめします。B型肝炎と同様に、治療開始後も腹部エコーや採血を軸に、腹部CTや内視鏡検査などによる定期的な検査が必要となります。
5)特にご来院いただきたい患者さん
南大阪地域はB型肝炎やC型肝炎に罹患しているにも関わらず、検査や治療をうけておられない方や、以前検診での検査やかかりつけの担当医師に指摘されているにもかかわらず受診をされていないいわゆる「潜在患者さん」が非常にたくさんおられるといわれています。
現在ウイルス性肝炎は十分コントロール可能な疾患といわれていますのでぜひとも一度受診いただけたら幸いです。
(文責 佐竹真/消化器内科医長)
1)肝硬変とは
肝硬変は慢性肝疾患において肝臓内に線維組織が増え、肝臓が硬くなる病気です。慢性肝疾患の原因にはC型肝炎やB型肝炎ウイルス、脂肪肝、アルコール性肝障害などがあります。肝硬変には身体症状がない代償期と症状が現れる非代償期があります。非代償期になると、黄疸(白目が黄色くなる・皮膚が黄色く染まる)や腹水・浮腫(お腹が張る、膝から下がむくむ)、食道静脈瘤の破裂(吐血)、肝性脳症(自分のいる場所が分からなくなる・尿や便の失禁)などの合併症が現れます。
肝硬変にならないように、また非代償期に進行させないようにすることが最も大切です。
2)肝硬変の診断について
2)-1 血液検査
以下の数値を中心に経過観察を行います。
①アルブミン
肝臓で作られるタンパク質。肝硬変になると多くの場合、3.5 g/dL以下に低下します。
②血小板
止血の際に働きます。肝臓の線維化が進行すると徐々に血小板数が減少します。肝硬変では血小板数10万 /μL以下が目安とされています。
③プロトロンビン時間
血液が固まる時間を表します。肝硬変では血液凝固因子が低下するためプロトロンビン時間が延長します。
④アンモニア
腸内細菌で産生されますが、肝硬変では分解が低下するため血液中に増加します。
⑤総ビリルビン
黄疸を表します。肝硬変で機能低下がおこると上昇します。
⑥FIB-4 index
血液生化学検査データ(ALT, AST, 血小板数)を用いて肝線維化の予測を行うスコアです。
2)-2 画像検査
①腹部超音波
肝硬変が進行すると肝表面の凹凸が明らかになり、肝臓の内部が粗く描出されます。肝臓が硬くなると、腸管からの血液を肝臓に運ぶ門脈の圧力が高くなるため、シャントと呼ばれる異常血管の発達を認めることがあります。 腹水の有無や脾腫の程度も分かります。SWE(Shear Wave Elastography) を用いて肝臓の硬さを測定することができます。肝硬変になると肝臓が固くなり、超音波が伝わる速さが速くなります。この変化をとらえて数値化することで肝硬度を測定します。SWEの値が1.5以上の場合、将来肝硬変へ進んでしまう可能性が高く、1.9以上の場合、既に肝硬変に進展している可能性が高いと判断されます。
②腹部CT
肝表面の凹凸の程度、肝臓の右葉と左葉の大きさのバランス、脾臓の大きさ、腹水、肝腫瘍などを調べることが可能です。造影剤を使用すると、肝硬変で発達することの多いシャントと呼ばれる異常血管の存在がよく分かります。
③肝生検
肝臓に細い針を刺してごく一部を採取して、顕微鏡で肝硬変かどうかを診断します。
④上部消化管内視鏡
肝硬変によって生じる食道・胃静脈瘤の有無を調べます。
3)肝硬変の治療について
3)-1腹水の治療について
腹水の治療では水分制限(1L/日以下)と塩分制限(5~7g/日)、次いで利尿剤(アルダクトン、ラシックス、トルバプタンなど)の内服または注射、そして低アルブミン血症(2.5g/dl未満)に対しては、アルブミンの輸血が有効です。
これらで治療してもなかなか改善しない難治性腹水の治療では、腹部にやわらかいチューブを刺して体外に排液する腹水穿刺治療を行いますが、最近は腹水濾過濃縮再静注法(CART)が注目されています。保険認可もされており、当院でも多くの患者様に受けていただき症状の改善に至っています。
3)-2 肝性脳症の治療について
腸内のアンモニア産生と吸収を抑え、血液中のアンモニア濃度を上昇させずに低下させることが重要です。そのため、アンモニアなどに対する薬物療法が中心となります。
便秘薬として使用されることのある「合成二糖類製剤」は、腸内でのアンモニア産生や吸収をおさえることができます。また「難吸収性抗菌薬」は、薬剤成分が体内でほとんど吸収されずに腸まで届き、腸内細菌によるアンモニア産生を抑制するはたらきがあります。肝不全用経腸栄養剤に分類される「分岐鎖アミノ酸製剤」は、アンモニアの解毒やタンパク質の合成作用を持ち、肝機能低下で崩れた体内のアミノ酸のバランスを整えるために使用します。
早期発見・早期治療により生活の質が向上することが知られており、当院では肝性脳症を疑う患者さんについては積極的に精神神経テストを早期から行い診断・治療につなげるようにしています。
4)アルコール依存症の新治療について
これまで日本の肝硬変患者さんの原因の半分近くをウイルス性肝炎、特にC型肝炎が占めていました。ところが2023年当院も参加した日本肝臓学会主導で40年以上続く全国調査(全国51施設)より現在の肝硬変の原因のトップはアルコールであることが判明しました。
肝硬変の成因別実態2023(文光堂)
アルコール性肝硬変の治療の根幹は減酒、禁酒でありますが、なかなか個人の意思だけで減酒、禁酒を達成することは難しいとされています。
これまで国内でのアルコール依存症治療薬は抗酒剤、飲酒欲求低減薬があり、全て断酒を目的とした薬剤でした。 ナルメフェン(セリンクロ🄬)は飲酒量の低減が目的であり、飲酒量の低減から断酒へ繋げていくための薬剤になります
ただしアルコール依存症は断酒をしない限り病状は悪化していく病気であるため、断酒を原則とし飲酒量を減らす目的のみでの処方は行ってはいません。
ナルメフェン(セリンクロ🄬)対象患者さんとしては以下のような患者さんです。
・アルコール依存症と診断された方
・断酒ではなく、飲酒量低減を初期段階での治療目標とすることが適切と判断された方
・習慣的に多量飲酒をしている方
・緊急の治療を要するアルコール離脱症状(幻覚、痙攣、振戦 せん妄等)を呈していない方
・お酒を飲む量を減らす意思のある方
ナルメフェン処方をご希望の方、並びにご相談希望の方は、、当科で同薬処方可能な担当医師 垣田(水曜初診、月曜金曜予約診)、佐竹(木曜初診、火曜金曜予約診)、城野(月曜木曜予約診)にお声かけいただけますと幸いです。
(文責 佐竹真/消化器内科医長、垣田成庸/消化器内科主任部長・消化器肝臓センター長)
1)膵臓がん
1)-1早期発見・診断の重要性
膵癌(通常型膵管癌)は予後が最も悪い癌の一つであるため、膵疾患の精査において最も重要な鑑別疾患であり、早期診断・早期治療が非常に重要となります。膵癌は近年増加傾向であり、2019年には悪性腫瘍の臓器別では第4位となっており、この30年間で約3倍に増加しています。膵癌では「なんとなく胃の具合が悪い」といった初期症状がみられることもありますが、がんが進行するまで無症状のことも多く、発見が遅れることが多いのが現状です。はっきりとした初期症状としては腹痛、腰背部痛、黄疸、体重減少がみられることが多いです。
1)-2 膵臓がんの検査
当院では膵癌が少しでも疑われる患者様には、血液検査、腹部超音波検査、造影CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)等の各種検査を積極的に実施し、膵癌の早期診断・早期治療に努めております。
特に、超音波内視鏡検査(EUS)は膵腫瘤の診断において良好な診断能が知られており、当院における超音波内視鏡検査の件数は、2023年度と比較して2024年度は3倍以上に増加しました。超音波内視鏡検査は通常のスコープと比較して太く、患者様のご負担が通常の内視鏡検査と比較して少なくないですが、鎮静剤、鎮痛剤を併用し、可能な限り患者様のご負担を減らすよう努めております。お近くの病院にて膵腫瘍を疑われた患者様はもちろんのこと、ご家族様に膵癌の方がおられ、膵癌のご心配がおありの患者様におかれましても、超音波内視鏡検査(EUS)を含めました各種検査を積極的に施行しております。
また当院は全国的にも数少ない、膵精密エコーを実施している施設です。膵臓を腹部から超音波でみるときは、体の構造上どうしても腹部により近い胃が邪魔をするため、体位変換を行って観察を行うものの、くまなく精査できない場合があります。膵精密エコーは通常腹部エコー検査の前に避けていただく飲水をあえてしていただくことにより、胃の中に水の層を作り、膵臓をより鮮明に描出する工夫を行います。 現在は水曜午後に検査枠を設けておりますので、ご希望の方は初診外来を受診頂くか、かかりつけ医の先生、もしくは当院外来担当主治医にお申し出ください。
1)-3 膵臓がんの治療
当院では膵癌による悪性胆道狭窄に起因した閉塞性黄疸がみられる場合には、内視鏡的胆管ドレナージや金属ステント留置術を必要時には緊急で施行します。また、膵癌に対して根治を目的とした手術療法、ならびに手術が難しい場合には腫瘍縮小を目指した化学療法を実施しております。治療方針に関しましては当院消化器外科と緊密に連携し、患者様のご意思を尊重した形で決定してまいります。並行しまして、癌性疼痛等のがんに起因した種々の症状に対しまして、緩和ケア内科と連携し、少しでも患者様の苦痛を取り除くよう努めてまいります。
2)膵嚢胞性疾患
2)-1 膵嚢胞性疾患の発見・診断の重要性
膵臓にできる腫瘍の中で液体を含む袋状の病変を膵嚢胞性疾患といいます。膵嚢胞性疾患は、腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞に分けられ、前者は膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm:IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(Mucinous Cystic Neoplasm:MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(Serous Cystic Neoplasm:SCN)、Solid-Pseudopapillary Neoplasm(SPN)に分類されます。近年画像診断の進歩によって、検診等でも膵嚢胞性疾患が偶然発見される機会が増えています。一部の膵嚢胞性疾患は悪性化のリスクがあり、専門病院での精査を受けて頂くことで、悪性化の兆候を早期に発見できるメリットがあります。
2)-2 膵嚢胞性疾患の検査
当院では、膵嚢胞性疾患を初回指摘された患者様におきまして、血液検査、MRI検査、造影CT検査、超音波内視鏡検査(EUS)等の必要な検査を組み合わせて施行します。膵嚢胞の大きさや性状、内部構造、主膵管の拡張の有無等を考慮して、悪性所見の有無や今後悪性化するリスクを総合的に判断し、外科的切除を含めた患者様に最適な治療方針をご提案します。悪性所見に乏しい場合は一定の期間で経過観察をさせていただきます。経過観察をする中で、特に膵嚢胞性疾患の中で頻度の高い膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMN)は、「嚢胞自体の癌化のリスクがある点」と「通常型膵癌が発生するリスクがある点」の2点に注意する必要があります。継続的に診療を行う中で、これらの点に特に注意して慎重に経過観察をしてまいります。
3)膵嚢胞性疾患の治療
当院では悪性所見のみられる膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMN)や、癌の発生する可能性の高い粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、低頻度ですが転移する可能性のあるSolid-Pseudopapillary Neoplasm (SPN)に対しては、原則的に外科的切除を施行しております。根治手術が望めない悪性腫瘍に対しましては化学療法を施行しております。
当院消化器外科とも緊密に連携し、チームとして患者様に最適な治療方針をご提案いたします。
(文責 津室悠/消化器内科副医長)
1)胆石症
1)-1 胆石症とは
胆のうや胆管に結石ができると、時に痛みや炎症など様々な症状を引き起こすことがあります。結石のできる場所によって、胆のう結石や総胆管結石と呼ばれます。
1)-2 胆石症の診断
胆石症の検査には、超音波検査(エコー)やCT検査、MRI検査などが有用です。
1)-3 胆石症の治療
無症状の胆のう結石は、経過観察と定期的なフォローアップでよいとされています。しかし、胆のう炎や胆石発作など症状が出たケースは治療が勧められます。また結石が充満している場合、胆嚢がんの合併が疑われる場合など、無症状であっても手術が勧められるケースもあります。胆のう結石の治療には、根治的治療として外科手術が第一選択です。
また総胆管結石ができると、胆汁の流れが悪くなり、肝障害や黄疸、胆管炎を生じる可能性が高くなります。胆管炎は重症化すると生命に危険が及ぶため、見つかった場合は内視鏡治療など何らかの処置を行うことを強く勧めます。内視鏡的胆管結石除去術が第一選択の治療であり、当院でも積極的に行っています。
2)胆道系悪性腫瘍
2)-1 胆道系悪性腫瘍とは
胆道がんは発生した場所により、肝内胆管がん、肝外胆管がん(肝門部胆管がん、遠位胆管がん)、胆嚢がん、乳頭部がんに分けられます。
胆道がんでは、黄疸が最も多くみられる症状です。ほかに発熱、みぞおちや右わき腹の痛みなどが起こることがあります。
2)-2 胆道系悪性腫瘍の診断
胆道がんの検査には、超音波検査(エコー)やCT検査、MRI検査、超音波内視鏡(EUS)を行います。また内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行い、胆管の組織や胆汁を採取して、がんの診断のための組織検査を行います。
2)-3 胆道系悪性腫瘍の治療
胆道がんの治療は、手術や抗がん剤治療が中心です。がんを取り除くには手術が最も有効であり、まず手術できるかどうかを判断します。周囲の血管や臓器への広がりが高度な場合や、その他の臓器に転移している場合は、抗がん剤治療を行います。また胆道がんにより胆汁の流れが悪くなると、黄疸や胆管炎などの症状をきたすことがあります。胆道閉塞をきたした場合には、胆汁を通過させるために胆道ドレナージを行います。
当院では消化器外科と密に連携して、患者様に最適の治療を提供できるように心がけております。
(文責 城野碧/消化器内科副医長)
1)胃がん検診はバリウムではなく胃カメラを
胃部エックス線検査、いわゆるバリウム検査は我が国で長らく検診での胃の検査の主流でした。比較的簡易で安価であり検診車による巡回検診で多くの人が限られた時間で受けることが可能です。しかしバリウムはあくまでも胃の粘膜の凹凸を、レントゲンを使って見る影絵であり、病変が見つかった場合には確定診断として内視鏡を施行しなくてはならず、検査の回数が結局増えてしまい患者さんの負担になることが、以前より指摘されていました。またバリウムの誤嚥や便秘、大腸の粘膜の小さなへこみにバリウムが貯留することで起こる憩室炎などの合併症や、少量ながらも被ばくという問題があります。
貝塚市では2024年度より当院を中心に数施設で胃カメラによる検診を開始しております。
希望者には経鼻内視鏡という径の細い内視鏡で施行も可能ですのでぜひとも当院で受検して頂ければ幸いです。
2)消化管がんの早期診断の重要性
消化器癌は日本人の癌罹患、死亡の約半数を占めます。
特に大腸癌の罹患率は増加傾向にあり、男女あわせた総数で1位、胃癌も減少傾向とはいえ3位と非常に高い状況にあります。
早期の胃癌や大腸癌は自覚症状に乏しく、症状が出現してからの検査だと早期に発見することが難しい場合もあり、積極的な健診や内視鏡検査などが必要となります。早期の状態で診断、治療することができれば、いずれも5年生存率90%以上と比較的良い状況にありますが、進行してしまうと生存率が著しく低下するため早期に発見治療することが非常に重要です。
3)消化管がんの検査と診断
消化管領域では約5000件/年の内視鏡検査・治療を行っております。特に胃癌や大腸がんなどの消化器癌の診断・治療に注力しています。画像強調内視鏡であるNBI(narrow band imaging)拡大観察や超音波内視鏡EUS (endoscopic ultrasonography)などを用いて正確な術前診断に努めております。
4)消化管がんの治療
適応病変には内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡治療を積極的に施行しています。またポリープに関しては通常のポリペクトミーや、従来の通電して熱凝固を加えながら切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)に加え、小さいものに関しては熱凝固を加えないCold polypectomyを用いた内視鏡治療にも取り組んでいます。
また外科手術が必要な症例については、地域がん診療連携拠点病院として消化器外科と協力して治療を行うとともに、緩和内科とも連携し患者さんの生活の質の向上にも努めています。
5)その他の治療
当院では良性疾患の診療も行っており、胃・十二指腸潰瘍、食道・胃静脈瘤などの消化管出血による吐・下血、腸閉塞などの緊急を要する疾患の対応にも注力しています。
6)なるべく楽に受けることができる内視鏡検査に努めます
「胃カメラや大腸の内視鏡検査は辛そうだ」と心配になる方も多いと思いますが、当院の内視鏡室では、鎮静剤をもちいた意識下鎮静での内視鏡や細径ファイバーを用いた経鼻内視鏡などを駆使して、医師・看護師・内視鏡技師が一丸となって、皆様に苦痛なく安全に、正確な内視鏡検査・治療を受けていただくため、日々努力しています。
内視鏡診療に関することでなにか疑問がございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
(文責 青井健司/消化器内科部長)
炎症性腸疾患としては潰瘍性大腸炎とクローン病という病気が有名であり、この2つの疾患についてご説明します
1)潰瘍性大腸炎
1)-1 潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に慢性的な炎症が起きて潰瘍などを生じる病気です。炎症は直腸から始まり、連続的に大腸全体へと広がります。炎症が強くなると頻繁な下痢、粘液便、血便、腹痛などの症状が現れます。とくに便意とともに腹痛が増強します。重症になると貧血や発熱、頻脈など全身状態の悪化を伴います。また、口内炎、関節炎、皮膚症状など大腸以外の症状が現れることもあります。
潰瘍性大腸炎の患者さんは近年、増加傾向にあります。遺伝的素因や環境的要因など様々な因子が複雑に関わり、免疫異常が生じて発症につながると考えられています。患者数に男女差はなく、発症年齢は20代前後が最も多く、比較的若い方に多いですが、各年代での発症がみられます。厚生労働省により難病のひとつに指定されています。
1)-2 潰瘍性大腸炎の診断
まずは他の類似の症状を引き起こす疾患との鑑別が必要です。症状の経過や生活習慣などを詳細に問診することが大切で、感染症ではないことを確認する検査や大腸内視鏡検査で大腸粘膜の状態を確認し、大腸粘膜の一部を採取して顕微鏡レベルで大腸粘膜に何が起きているかを調べたりします。また、血液検査で炎症や貧血の程度、栄養状態を確認します。
1)-3 潰瘍性大腸炎の治療
早期の寛解導入と長期の寛解を維持することを目標にします。そのために症状や検査所見をもとに重症度を判断し、それに見合った治療薬を選択します。基本的には手術によらない治療(内科的治療)で炎症を抑えることを目指します。内科的治療で症状が治まらない場合には、外科治療(大腸全摘など)を考慮する必要があります。内科的治療では、内服薬、坐薬、注腸薬、注射薬(点滴、皮下注射)などがあります。使用する薬剤には、5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬、分子標的治療薬(抗TNF-α抗体製剤、抗インターロイキン12/23抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤、JAK阻害剤、カルシニューリン阻害剤があり、それぞれ異なるメカニズムによって腸管の過剰な炎症反応を抑制します。各製剤により投与方法が異なります。薬剤とは異なる治療には血球成分除去療法があります。いずれかの治療を開始しても効果が乏しい場合には、ほかの治療に切り替えることもあります。適切な治療により症状を落ち着けて維持することが大切です。
<潰瘍性大腸炎活動期の内視鏡画像>
2)クローン病
2)-1 クローン病とは
クローン病は消化管に炎症を生じ、下痢、腹痛や発熱などの症状をきたす病気です。貧血、体重減少などの全身症状が主な訴えであることも少なくありません。また肛門の周囲に痔瘻や膿瘍で発見されることもあります。消化管の中でも特に小腸や大腸に病気が起こりやすいです。炎症により、狭窄や瘻孔、膿瘍などを来すことがあります。その他、口内炎、関節炎、皮膚症状、眼の症状(腸管外合併症)を生じることもあります。明らかな原因は不明ですが、遺伝的な要因や食事や腸内細菌などの環境的な要因を背景に、免疫機能の異常が生じ、病気が発症、持続すると考えられています。クローン病の患者数は年々増加しており、10代から20代に発症する患者さんが多くみられます。厚生労働省により難病に指定されています。
2)-2 クローン病の診断
クローン病が疑われた場合には、診断のために画像検査が必要となります。腸管の状態を把握するために内視鏡検査が行われます。上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査に加え、小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査などが検討されます。小腸全体を調べる検査として小腸造影検査もあります。内視鏡検査の際には必要に応じて粘膜の一部を採取する検査を行い、病理診断も行います。また腸管外の検査のために超音波検査、CT検査、MRI検査などを行います。
2)-3 クローン病の治療
早期の寛解導入と長期の寛解維持を実現することにより、瘻孔や狭窄などの腸管合併症を防ぎ生活の質を維持することを目標にします。臨床症状や画像検査所見をもとに重症度を判断し、各々に見合った治療法を選択します。内科的治療(薬物治療や栄養療法)と外科治療(手術)があり、基本的には内科的治療を行います。薬物治療として、5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤があります。肛門病変には抗生剤を使用する場合もあります。また、栄養療法は腸管の安静ならびに腸からの食餌抗原の除去を図る基本治療ですが、経腸栄養(刺激が少なく、脂肪分の少ない栄養剤の内服)と完全静脈栄養があります。腸管の狭窄や瘻孔、腹腔内の膿瘍などが発生した際には外科治療が必要となります。近年では、粘膜の炎症を完全に抑えること(粘膜的寛解)が治療目標であり、自覚症状が改善されていても定期的な検査が必要と考えられています。
(文責 岩谷修子/消化器内科副部長)
医学は科学の側面を有しており、日進月歩の技術革新や新知見をアップデートする必要があります。また当院は大阪大学消化器内科の関連施設であり、診療の充実はもちろんですが、診療と同時に臨床研究を行い患者さんに成果を還元する使命も有していると考えております。
研究で我々医師が新知見に触れることで、臨床の充実にもつながるという相乗効果も期待できます。
これまで本当にたくさんの患者さんが協力してくださったおかげで、市立貝塚病院消化器内科は様々な知見を国内外で開催される学会で発表したり、学術論文として世界に発信したりすることができております。今後ともご協力いただけましたら幸いです。
ただし研究の参加はあくまでも患者さんの自由意思ですので、参加いただけない方に対してももちろんベストな診断と治療を行いますのでご安心ください。
大阪大学との共同研究(2021年/2024年)
国際共同研究で非アルコール性脂肪性肝疾患のバイオマーカーを同定 - ResOU (osaka-u.ac.jp)
“脂肪肝から肝がんになりやすい人”を見分ける新指標 - ResOU (osaka-u.ac.jp)
垣田のResearch Map
垣田 成庸 (Naruyasu Kakita) - マイポータル - researchmap
佐竹のResearch Map
佐竹 真 (Shin Satake) - マイポータル - researchmap
(文責 垣田成庸/消化器内科主任部長・消化器肝臓センター長)
かきた なるやす
垣田 成庸
消化器内科主任部長、消化器・肝臓センター長
専門分野:
消化器内科、消化管・肝胆膵疾患 特に、肝炎・肝硬変・肝細胞癌の診断と治療、脂肪性肝疾患(SLD)の診断と治療資格:
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本内科学会総合内科専門医 / 指導医
・日本消化器病学会専門医 / 指導医
・日本肝臓学会専門医 / 指導医
・日本消化器内視鏡学会専門医
・日本消化管学会胃腸科認定医 / 専門医 / 指導医
・日本がん治療認定医機構がん治療認定医
・臨床研修指導医
・日本救急医学会ICLSインストラクター
・日本内科学会内科救急JMECCインストラクター
・看護師特定行為研修指導者
・難病指定医
・日本医師会認定産業医
・日本不整脈心電学会心電図検定1級
・日本内科学会近畿支部評議員
・日本消化器病学会近畿支部評議員
・日本消化器内視鏡学会近畿支部評議員
・日本肝臓学会西部会評議員
・大阪大学医学部臨床准教授
あおい けんじ
青井 健司
消化器内科部長
専門分野:
消化器内科、消化管疾患 特に、消化管癌の内視鏡診断と治療資格:
・日本内科学会認定内科医
・日本内科学会総合内科専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医
・日本消化器病学会専門医
いわたに しゅうこ
岩谷 修子
消化器内科副部長
専門分野:
消化器内科、消化管疾患 特に、炎症性腸疾患の診断と治療資格:
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医
・日本医師会認定産業医
・難病指定医
やすい としみつ
安井 利光
消化器内科医長
専門分野:
消化器内科資格:
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医
・日本肝臓学会専門医
さたけ しん
佐竹 真
消化器内科医長
専門分野:
消化器内科資格:
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医
・日本肝臓学会専門医
・日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
・難病指定医
じょうの みどり
城野 碧
消化器内科副医長
専門分野:
消化器内科資格:
・日本内科学会内科専門医
つむろ ひろし
津室 悠
消化器内科副医長
専門分野:
消化器内科資格:
・日本内科学会内科専門医
休診情報はありません。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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1診 | 初診 岩谷 修子 |
初診 青井 健司 |
初診 垣田 成庸 |
初診 佐竹 真 |
初診 安井 利光 |
|
2診 | 予約制 垣田 成庸 |
予約制 岩谷 修子 |
予約制 青井 健司 |
予約制 安井 利光 |
予約制 垣田 成庸 |
|
3診 | 予約制 城野 碧 |
予約制 垣田 成庸 |
予約制 津室 悠 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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1診 | 予約制 垣田 成庸 |
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2診 | 予約制 垣田 成庸 |
予約制 安井 利光 |
予約制 岩谷 修子 |
予約制 青井 健司 |
予約制 垣田 成庸 |
|
3診 | 予約制 津室 悠 |
予約制 佐竹 真 |
予約制 城野 碧 |
予約制 佐竹 真 |
医師の交替や変更、また休診の場合もございますのでご注意ください。
内科及び消化器内科の午後診療は、現在予約制となっています。
この度診療体制を確保するため、ご予約の患者さま以外の方(診察(薬)の方を含みます。)の受付は午前のみに徹底させていただきます。ご迷惑をおかけしますが、ご理解の程よろしくお願いいたします。