子宮頸がんは、子宮の入り口(子宮頸部)に発症するがんで、婦人科がんでは最も頻度の高いがんです。30~40歳代で多く診断されています。40歳以上では減少傾向ですが、20~30歳代の若い女性は増えています。
子宮頸がんの発症には、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因となることが明らかになっています。
当院では平成24年10月に、当時先進医療であった「腹腔鏡下子宮体癌根治手術」の施設認定を取得しました。平成26年4月1日からは、認定施設で行う場合のみ保険適応となっています。当院責任医師は、当術式に関して多数の経験があります。
子宮頸部異形成や初期の子宮頸がんの場合、自覚症状が全くないのがほとんどです。症状が出た場合は、ある程度進行していると考えられます。
子宮頸がんの発生原因の多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)による感染です。HPVは性交渉で感染するウイルスですが、HPV感染は女性にはよく見られるもので、多くは免疫力によって自然に排除されます。
HPVには100種類以上のタイプがあり、その中で子宮頸がんの発生と関係があるのは13種と言われています。これらのHPVに感染し、免疫がうまく機能せず長期の感染が続くと細胞に異変(異形成)が起こり、そこからがんに進行していきます。
子宮頸がんの発生原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)には複数の型があり、その内の一部の型のHPV感染を予防できるワクチンが使用可能になっています。
→詳細はこちら「子宮頸がんワクチン予防接種(PDF)」
子宮頸部異形成は、軽度や中等度であれば自然治癒する場合もあり、早急な治療対象とはなりません。
子宮頸部異形性が進んだ高度異形成やごく初期のがんでは「子宮頚部円錐切除術(子宮頚部を円錐状に切除する)」による確定診断と治療を実施しています。
妊娠の可能性を残した妊孕性温存治療を積極的に行っています。当院は、初期進行子宮頸がんに対して、「妊孕性温存が可能な広汎子宮頸部全摘出」を行っている数少ない施設の一つでもあります。
排尿障害などの後遺症軽減のための「神経温存広汎子宮全摘術」を行うなど、より侵襲の少ない安全な縮小手術での完全治癒をめざし、QOL(生活の質)の向上にも努めています。
手術治療の他、化学療法を行って腫瘍を縮小させてからの手術療法(NAC後手術)や、副作用の少ない高精度放射線治療装置と化学療法を併用した化学放射線同時療法(CCRT)を選択します。
浸潤した子宮頸がんの根治には、子宮・膣の一部・骨盤リンパ節・卵巣・卵管を切除する広汎子宮全摘出術が一般的です。そのため、妊娠が不可能になるという課題があります。
当院では、手術後も妊娠を希望される患者さまに対し、病状を充分に考慮したうえで、子宮頸部のみを切除し子宮体部を温存する「広汎性子宮頸部摘出術」を行っています。子宮体部を残すことで、妊娠・出産の可能性(妊孕性)を残すことができます。
この「広汎性子宮頸部摘出術」では、子宮体部と腟の一部をつなぎ合わせて再建します。切除範囲の判断や子宮の機能を残した再建など、非常に高い技術が求められるため、全国でも数少ない施設でしか実施できません。
広汎子宮全摘出術は、子宮・膣の一部・骨盤リンパ節・卵巣・卵管を切除する手術です。その際、排尿に関係する神経の一部に損傷を与えることで、尿意を感じたり尿を出すことが難しくなることが時々あります。排尿障害は、尿路感染症の原因となるなど、患者さまのQOL(生活の質)を大きく低下させてしまいます。
「神経温存広汎子宮全摘術」は、排尿神経を温存しながら根治のために腫瘍を充分に切除するもので、初期の進行がんで大きさが比較的小さい場合が対象となります。
子宮頸がんは、がんになる前の「異形成」の状態での早期発見と治療ができれば、怖がる必要はありません。早期発見と治療のためには、定期的な子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)の受診が何よりも重要です。しかし残念ながら、わが国の「子宮頸がん検診」の受診率は20%台と欧米諸国に比べ非常に低い数値です(参考:アメリカ・イギリスは70%台)。
未来の子供と自分を守るために、「子宮頸がん検診」を2年に1度は受けましょう。
市民健診による「子宮がん検診」の他、当院の健診センターでの「がん検診/女性オプション」など、子宮頸がん検診にも尽力しています。