人工関節置換術は、怪我や疾患により傷んだり変形した関節の表面を取り除いて、人工関節に置き換える手術です。 人工関節は、生体材料として信頼性の高い金属(チタン合金、コバルトクロム合金)のほか、プラスチック(ポリエチレン)、セラミックなど、摩耗に強く耐久性を高める処理を施した材質で作られています。
痛みが取り除かれ、関節の機能が再生されるだけでなく、脚のゆがみを直し、脚の長さを揃えて歩き方や身体全体のバランスを整えることができます。
しかし、人工関節によって関節機能が回復しても、筋力があまりに衰えていると、リハビリに時間がかかり歩行など運動能力の回復が難しくなってしまいます。
「健康寿命」を延ばして自分らしい生活を楽しむために、間接のトラブルを放置せず、整形外科へご相談ください。
人工膝関節置換術には、全体を人工関節に置き換える「全置換術」と、膝関節の傷んでいる部分だけを人工関節に置き換える「片側置換術」があります。
セメントを用いる方法と用いない方法があり、人工関節の種類も異なります。
どちらの方法で固定するかは、患者さまの年齢・活動レベル・骨の状態などの状況により判断します。
骨に直接埋め込んで固定する方法です。
埋め込む部分がしっかりとフィットするように、骨の形状を整えて固定します。また、埋め込む部分の素材の表面には細かい凹凸を施した特殊な加工がされており、手術後徐々に、この表面に骨の組織が入り込んでいくことで、骨にしっかりと固定されます。
しかし、しっかりと固定されるには6ヶ月程度必要なため、その間のゆるみに注意する必要があります。
骨との間に固定材(骨セメント)を使用して固定する方法です。
骨の強度が落ちているご高齢の方に適応されます。当初の固定力は高いのですが、固定剤の経年劣化で固定力が落ちる可能性があります。
※ 手術前に歩行が可能だった方なら、自力での階段の昇り降りができる程度までのリハビリを目安にしています。
※ セメントを使わない直接固定法を採用した股関節置換術では、骨が人工関節にある程度固定されるまでのおよそ1ヶ月強の間、手術した側の足をついて歩くことはできません。そのため、入院期間が延びたり、外来でのリハビリの継続やリハビリテーション病院へ転院していただくことになります。
※ 人工股関節・人工膝関節共に、手術内容によっては同日に両側の手術をすることも可能です。その場合、入院期間が長くなる可能性があります。
関節には細菌への抵抗力が無いため、感染には細心の注意が必要です。
手術室も一般の手術室と違い、細菌を大幅に減らした手術室内で行っています。
しかし、術後すぐではなく年数が経過した後でも、歯槽膿漏や膀胱炎、扁桃炎や気管支炎、時にはひどい風邪からも人工関節に細菌が感染し、腫れや傷み、発熱が発生することがあります。
退院後も異常があった場合は、すぐに受診してください。感染しやすい状態の方(糖尿病、関節リウマチ、副腎皮質ホルモンを服用している)は特に注意が必要です。
場合によっては人工関節を一旦外し、再手術が必要になる場合もあります。
素材の摩耗により、ゆるみが生じることがあります。人工関節がゆるむと、痛みが出たり水がたまったりします。
筋力アップや体重管理、正しい姿勢の維持などで、ゆるみを予防することが重要です。また、少なくとも1年に1度は受診していただき、定期的に人工関節の状態のチェックをしてください。
人工関節がゆるんでしまった場合は、人工関節の入れ換え手術(再置換術)を行います。
手術後の安静時に静脈の血流が停滞することで、静脈内に血の塊ができます。動き始めた時にこの血栓が血流に乗って動き、極まれですが、肺などに詰まれば命に関わることもあります。
当院では、血栓予防のストッキングの着用や、血流を促すポンプを足に装着するなどの対策を行っています。
ご高齢者の場合、生活環境の変化により、一時的に認知症状が見られることがあります。