市立貝塚病院は、平成25年7月に肝がんの腹腔鏡下手術の施設認定を取得し、肝がんの腹腔鏡下手術の一部が保険で受けられるようになりました。
「施設認定」は、高度な医療技術や経験を必要とする治療に対する安全性を確保するためのもので、それぞれの手術に対して、一定条件(医師の経験や施設の年間実施件数など)を満たしている施設に与えられます。
肝臓には太い血管が多く内部にも血管が無数に走っており、手術の際には細かい胆管も閉鎖しながら肝臓を切らなくてはなりません。 また、肝臓には心臓から送り出される循環血液量の約1/4にも相当する多くの血液が供給されています。位置も心臓のすぐ下にあり、手術の際には、出血をいかに食い止めるかが大きな課題となります。
そのため、肝臓の手術は開腹でも困難であり、腹腔鏡下ではさらに難易度が高くなるため、他の臓器に比べ、肝臓の腹腔鏡下手術は普及が遅れていました。しかし現在は、開腹手術で発達した様々な止血技術が腹腔鏡下手術の器具等にも応用され普及したことで、腹腔鏡下手術が可能になっています。
肝臓は肋骨の中にあります。また「実質臓器」と言われる細胞の詰まった固形臓器で、胃や腸のようには変形しません。そのため、炭酸ガスで腹腔内を膨らませても肝臓と肋骨の間に空間を作ることは難しく、保険適応には制限が設けられています。
腹腔鏡を活用した手術には、いくつかの種類があります。病変の状況や手術部位など、個々の患者さまに合わせて選択します。
肝機能が低下した方には「側副血行路」と呼ばれる新しい血管が腹壁にできている場合があります。大きく腹部を切るとその血管を傷つけてしまい、腹水などの合併症の危険性が高くなりますが、腹腔鏡下では傷が小さいため、こうした合併症の減少も期待できます。肝臓を切除した部分が大きく、取り出し口を広げる場合でも、15~20cm程度の傷で済みます。
肝がんは、肝臓内での再発が多いがんです。腹腔鏡下手術では手術後の癒着が少ないため、再発をされた方に対しても手術が行いやすくなります。
肝臓は様々な機能を持つ重要な臓器です。手術のストレスが更に肝臓に負担をかけるため、術後管理にも注意が必要です。腹腔鏡下手術では、傷が小さく痛みが少ないなど、身体への負担が少ないのはもちろん、肝臓への負担を最小限にできます。