「腹腔鏡下手術」について
腹腔鏡手術は、傷が小さく身体への負担が少なく(低侵襲)、患者さまへのメリットが大きい手術方法です。
日本では1990年代初頭に胆嚢摘出術から普及し始め、現在では多くの臓器や疾患にも適応されるようになってきました。
腹腔鏡下手術とは
腹腔鏡下手術では、皮膚を5mm~1cm程度数カ所切り開いて穴を作り、腹腔鏡(内視鏡カメラの一種)とマジックハンドのような専用の手術器具を腹腔内に挿入し、腹腔鏡によって映し出される内部の様子を確認しながら手術を行います。
腹腔内は炭酸ガス(二酸化炭素)を注入して膨らませ、視野の確保と器具を動かすスペースを作っています。
単孔式腹腔鏡下手術
単孔式腹腔鏡下手術は、1つの切開部分から腹腔鏡や手術器具を全て入れて行います。整容性(術後の美観)が高いため近年急速に普及してきました。
当院でも、2012年7月以降、大腸・小腸疾患に単孔式腹腔鏡下手術を導入。2013年4月からは「単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術」を行っています。
腹腔(ふくくう)とは
「腹腔」は横隔膜より下の腹部を指します。
「腹腔鏡下手術」は、消化器外科・婦人科・泌尿器科分野と、幅広い臓器が対象となります。
腹腔鏡下手術のメリット
患者さまご本人が直接感じられる利点の他に、手術後の経過や治療結果にも重要となる利点があります。
- 傷が小さいため、傷が目立たず痛みが少ない
従来の開腹手術では大きく切開する必要がありますが、腹腔鏡下手術では数カ所の小さな切開のみ。そのため、大きな手術跡が残らず、痛みも少ないのが大きなメリットです。
- 早期の退院・社会復帰ができる
痛みが少ないためリハビリ等もすぐに開始でき、手術後の回復も早くなります。そのため、短期間で退院でき日常生活に早く復帰することで、経済的・精神的負担も軽減できます。
- 癒着が少ない
癒着は手術の大きな課題の一つです。組織がひっつく(癒着する)ことで、腹痛・腸閉塞・不妊症など術後合併症が起こる場合もあります。
腹腔鏡下手術では、臓器を手で触らない、臓器が外気に触れない、腸管運動の回復が早いなどから、癒着が少ないのが利点です。
また、複数回の手術を行う際に癒着が大きな妨げとなる場合がありますが、腹腔鏡下手術ではこうした問題を防ぐことができます。
- 広がる治療の可能性
高齢などで開腹手術は難しい患者さまでも、病巣を切除できる可能性が出てきます。
- 医療者:細かい部分が見えやすく情報を共有できる
腹腔鏡による拡大した手術画像モニターを見ながらの作業のため、細かい部分が見えやすくなります。また、全員が同じ視野を共有でき状況を把握できることで安全に手術が行えます。
腹腔鏡下手術のデメリット
患者さまにも医療者にも利点の多い腹腔鏡下手術ですが、特有の問題点もあります。当院では、患者さまの意思を尊重し状況に十分配慮した上で、より安全な治療ができるよう取り組んでいます。
- 手術時間が長くなることがある
- 拡大画面が見られる反面、肉眼で見るより視野が狭く、手術の難易度が比較的高くなる
- 思わぬ出血のとき対処しづらい
※通常の開腹手術に移行する場合もあります
- 炭酸ガスでお腹を膨らますことで、心臓や呼吸器合併症、炭酸ガス塞栓症などが稀に起こる場合がある