【副院長・泌尿器科部長:能勢 和宏】
「従来の手術では、電気メスやレーザーを用いて、排尿の妨げとなる前立腺の肥大部分を切除する方法が一般的でした。しかし、これには多少の出血や術後の痛み、刺激が伴うことがありました。
一方で、WAVE手術は、内視鏡を使用し、前立腺に針を数か所刺して水蒸気を注入するだけの治療法です。切開が不要で出血もほとんどないため、術後の痛みや刺激も最小限に抑えられ、身体への負担が非常に少ない“優しい手術”です。
(ポイント)
まず、麻酔をかけた後、「レジューム」と呼ばれる水蒸気発生システムを使用して、内視鏡を尿道から挿入します。そこから前立腺に針を刺し、約103℃の水蒸気を注入します。
水蒸気が広がると、前立腺の細胞が徐々に壊死し、体内に吸収され縮んでいきます。通常、術後1~3ヶ月かけて徐々に改善していくのが特徴です。
術後は約1週間、バルーンカテーテルを留置しておきます。
この治療法は2013年にヨーロッパで報告され、その後の臨床試験で有効性と安全性が確認されました。2015年には米国FDA(食品医薬品局)に認可され、2022年9月に日本でも厚生労働省から承認を受け、保険適用となりました。
約10年の歴史があり、世界的にも普及が進んでいる治療法です。
WAVE手術は以下のような患者さんに適しています。(年齢制限はありません。)
WAVE手術は低侵襲で優しい手術ですが、術後数週間は手術部のむくみにより、一時的に排尿がスムーズにいかないことがあります。通常1~3ヶ月で徐々に改善していきます。
主な合併症としては
また、海外の報告では性機能維持が期待される手術とされていますが、個人差があります。
従来の治療法には、薬物療法や外科手術があります。
薬物療法では、
外科手術では、
WAVE手術の最大のメリットは、これらの手術と比べて低侵襲であり、出血が少なく、短期間の入院や日帰り手術が可能である点です。患者さんの負担が少なく、早期の社会復帰が期待できます。
前立腺肥大症は、多くの中高年男性が直面する問題ですが、治療の選択肢が増えています。WAVE手術は、低侵襲で身体に優しく、短期間での回復が可能な新しい治療法です。
「手術が怖い」「できるだけ体に負担をかけたくない」という方には、ぜひ検討していただきたい治療法です。気になる方は、ぜひ泌尿器科の専門医にご相談ください。
・市立貝塚病院 泌尿器科 前立腺排尿ケアセンターへのリンクはこちら
・WAVEイメージ https://youtu.be/BPMOVo5K5n4
・WAVE治療の流れ