【眼科部長:三浦 和美】
「眼は小さな臓器ですが、人が得る情報の約80%は視覚からといわれています。そのため、一生を通じて眼の健康を守ることは非常に重要です。当院では、赤ちゃんからご高齢の方まで幅広い年齢層の患者さんを診察しています。」
「小児では弱視治療と屈折矯正(近視・乱視・遠視への眼鏡処方)が視力の発達にとって非常に大切になります。当院には検査に習熟した認定視能訓練士が在籍しておりますので、子供さんの検査を優しく丁寧に行っています。弱視の訓練ではアイパッチを使用したり、眼鏡をかけたりして視力が上がってくるように忍耐強く訓練してもらう必要がありますが、ご家族にも丁寧に説明し、不安なく治療に取り組めるよう心掛けています。」
「ほとんどの方は『視力が良い=眼は健康』と思いがちですが、実は眼の疾患は眼底の病気が圧倒的に多く、しかもその多くは進行するまで視力が下がらないので自分では気づかないことが多いのです。特に40歳を過ぎたら、眼底検査を受けることが重要です。」
「眼底検査で特に多くみつかるのは緑内障です。40歳以上では20人に1人が緑内障を発症するといわれています。眼圧が高いことにより、眼底の視神経が傷んでくる病気ですが、日本では眼圧が高くなくても緑内障になる人のほうが実は多いのです。緑内障によって視野の一部が欠けていても、初期では気づくことはほとんどありませんので、よく見えていても、定期的に眼底検査を受けて、緑内障を早期に見つけることをお勧めします。
「高齢になるとどなたでもかかるのが白内障です。当院でも非常に多くの方が白内障手術を受けておられます。白内障の手術では濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを代わりにいれて見えやすくするのですが、眼内レンズは近年どんどん進化しており、当院で採用している眼内レンズも最新であり、かつ安全面、機能面で非常に優れていると認めたものを採用しています。乱視矯正や、焦点深度拡張型の眼内レンズという、遠方から中間距離まで自然にピントがあうレンズも多く使用していて、運転免許が裸眼で通るようになったと喜んでいただいたり、老眼が軽くなって新聞がよみやすくなったなどのお声もいただいています。他にも通常の保険診療とは異なりますが、眼鏡をできるだけかけたくないという方には多焦点眼内レンズ(遠近両用の眼内レンズ)も選定療養という制度で受けられるようになっています。
「網膜の病気で多いのは、黄斑前膜や黄斑円孔などです。ものが歪んで見えたり、真ん中が見えにくいといった症状が現れます。当院ではこれらに対する硝子体手術も多く行っております。手術では目の中にガスを注入する場合があり、手術後に数日間うつ伏せ姿勢を保っていただく必要ありますので、安心のために入院していただいております。
同じように物が歪んでみたり視力が低下したりする病気で、加齢黄斑変性があります。これは加齢に伴い網膜の中心部が弱くなって、そこから出血したり水がもれて黄斑部が障害されます。これには抗VEGF薬といわれる薬剤を眼の中に注射して治療します。」
「いろいろと治療を尽くしても、残念ながら低視力で生活に支障を来してしまう方もいらっしゃいます。当院では視覚障害の身体障害者手帳をお持ちの方にはロービジョン外来をご案内しています。まぶしさを軽減して少しでもみえやすくするための遮光レンズの処方や、読み書きの困難さに対しては拡大読書器を実際に手に取って体験してもらったりしています。手帳をお持ちでなくても見えにくさで生活に不自由を感じている場合は、日常でできるちょっとした工夫などもご提案するようにしていますので、あきらめずにご相談ください。」
「はい。涙が鼻のほうへ流れていくための細い通り道(涙道といいます)がふさがっていたり、せまくなっていたりする場合には、閉塞部を開通させる治療を行います。当院では涙道内視鏡を使って病変部を確認しながら治療を行っています。最近では抗癌剤の副作用で涙道がふさがってしまうというケースも増えています。ひどくなる前にシリコンチューブを涙道に入れておいて涙道の閉塞を予防するという治療も行っています。」
「はい。2024年7月のランセット認知症予防委員会によると、視覚障害は『認知症に対する修正可能なリスク因子』と認定されました。ますます高齢化社会における眼科治療介入の必要性が増してきていると実感しています。眼のことで不安がある方は是非当院を受診してみてください。」
本日は貴重なお話をありがとうございました!