【乳腺外科部長、乳がん高度検診・治療センター長:大城智弥】
乳腺外科は、乳房の疾患全般を診療する診療科です。当院は、大阪府南部の乳がん診療の拠点として2004年に「乳がん高度検診・治療センター」を設立し、乳がん検診から診断、手術、薬物療法、放射線療法、緩和ケアに至るまで、当院で一貫した質の高い医療の提供ができるような体制を整えています。乳がんの手術は、大阪府下でも屈指の手術件数(年間200件前後)を手掛けており、形成外科医師の協力を得て乳房再建術も積極的に行っていることが特徴です。
乳がん診療の中心になっているのが、私たち乳腺外科医です。「乳腺外科」というと「外科」の名前がついているため、手術だけを担当している診療科と思われるかもしれませんが、乳がんの薬物治療の発展が目覚ましい近年、私たちの仕事の半分以上は「乳腺内科」といっても過言ではないほど、薬物療法の占める割合が増えてきました。
一方、乳がんの手術も非常に大切な治療の一つであることに変わりはありません。乳房という女性にとっては象徴的な臓器の手術に日々向き合っており、乳房再建術の選択肢を含め、納得して治療を受けていただけるように心がけています。
当科は大阪大学乳腺内分泌外科教室の関連病院として5名の乳腺専門医(うち女性医師3名)が在籍しています。また、乳がん看護認定看護師をはじめ、マンモグラフィ撮影技師や乳腺超音波検査技師、がん化学療法認定看護師など優秀なスタッフが揃っており、お互いの高い専門性を生かし、私たち自慢の「乳腺チーム」として皆で協力し、患者さんに安心して治療を受けていただけるように診療を行っています。
また、比較的小規模な市民病院だからこそ、形成外科や病理診断科、放射線科、緩和ケア内科など乳がん患者さんの診療に関わる他科の医師との物理的・心理的な距離も近いことも当院の特徴だと思います。
患者さんによりよい医療を届けたいという私たち乳腺外科医の思いを、快くみんなで支えていただいており、乳腺外科医として非常に働きやすい環境でもあります。
現在、日本人女性の9人に1人が生涯で乳がんにかかる可能性があると言われており、女性にとっては決して他人事ではない疾患です。一方で、乳がんは早期発見ができれば、90%は治すことができることも分かっています。日本は「乳がん検診の検診率が低い」と言われていますが、貝塚市は比較的検診受診率が高く(令和2年度14.6%:大阪府全体10.1%)、乳がん検診はある程度認知されてきました。
最近はそれに加え、自己検診=「ブレストアウェアネス」の大切さが重要視されるようになってきました。「ブレストアウェアネス」とは「乳房を意識する生活習慣」、つまり、乳房の状態に日頃から関心をもつことにより、乳房の変化を感じたら速やかに医師に相談するという正しい受診行動を身につけましょう、ということです。自分の体は自分が一番よくお分かりだと思いますので、是非みなさんも意識して、何かあればいつでも相談いただければと思います。お忙しい日々の中、1か月に1回日を決めて自己触診・・・とまでは難しいと思いますので、私は「入浴時に石鹸で体を洗う際、ついでに触っていただく程度でも十分ですよ」と紹介しています。
私たち乳腺外科医師の仕事は、乳がんをできるだけ早期発見すること、そして乳がんにかかられた方が納得して治療を受け、その後も自分らしい人生を歩んでいただけるようにサポートすることだと思います。現在の医療で提供できる選択肢を、できるだけ分かりやすく説明し、必要な情報を提供することで、それぞれの患者さんにとっての「ベスト」を常に一緒に考える姿勢でありたいなと思っています。
乳がんにかかられた方やそのご家族に向き合う中、時にはその責任に身が引き締まる思いになることがあります。乳がんの治療はまさに日進月歩ですが、日々治療に励んでおられる患者さんに対して、常に最善を提供できるよう、私自身も一生勉強が必要だと感じ肝に銘じて日々研鑽しております。
乳がんと診断され治療を受けられた方が、その後も充実した日々を送っておられることを報告いただくと、ちょっといいことできたかな、この仕事を選んで良かったな、ととても嬉しくやりがいを感じる日々です。
大阪府南部地域の方々を支える乳がん診療の拠点病院として、これからも継続的に質の高い医療を提供し、安心して受診いただけるような環境を整えるため、様々な新しい活動を発信していきたいと考えています。最後に、私が是非皆様に知っていただきたい当院の活動を紹介させていただきます!